住宅ローンと不動産共有による相続問題
【更新日】
2025年6月20日(金)
相続
不動産
自宅の共有名義に関してこの様な事例がありました
息子さんが自宅を購入する際、住宅ローンの審査を通すために父の所得と合算して申請し、その結果として、父と息子がそれぞれ50%ずつの持分で共有名義として登記されました。
その後、父が亡くなると、父の50%の不動産持分は相続財産となり、民法に定められた法定相続分に基づいて相続人に分配されます。相続人が「配偶者(母)」と「子供2人(息子とその兄)」の場合、以下のように分けられます。
相続による持分の分割(父の50%部分について)
• 母(配偶者):法定相続分は1/2。
➡ 父の50% × 1/2 = 25%
• 息子(住んでいる本人):法定相続分は1/4。
➡ 父の50% × 1/4 = 12.5%
• 兄(同居していない):法定相続分は1/4。
➡ 父の50% × 1/4 = 12.5%
つまり、もともと息子は50%の持分を持っていましたが、父の持分50%のうち12.5%を相続することで、合計62.5%の持分を所有することになります。
しかし、兄はこれまで関係のなかった不動産に対して12.5%の共有持分を相続することになり、登記上の所有者(共有者)として名を連ねることになります。
問題点とリスク
このようにして発生した「意図しない共有」は、以下のようなトラブルを招く可能性があります:
• 兄が自らの持分12.5%の権利を主張し、売却や賃貸、リフォームなどに関して口を出す可能性がある。
• 兄が自らの持分を第三者に売却することも法律上は可能(ただし現実には買い手が限られる)。
• 不動産全体の処分(売却など)には共有者全員の同意が必要となるため、自由に処分できなくなるリスクがある。
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共有名義トラブルの回避策
このような問題を避けるためには、以下のような事前・事後の対策が重要です。
1. 事前対策
住宅ローンを組む際に、父を連帯保証人にする方法を検討し、不動産の持分は持たせない。これにより、将来の相続対象からこの不動産を外すことができます。
2. 相続対策
父の生前に遺言書を作成しておき、父の持分50%を全て息子が単独で相続する旨を明記する。これにより、兄や母が不動産の共有者とならずに済みます。
※遺留分の問題などもあるため、弁護士など専門家の助言が望ましい。
3. 相続後の対応
すでに相続が発生してしまった場合は、兄が相続した12.5%の持分を、息子が買い取る形で調整することで、不動産の単独名義化を目指すことができます。
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このように、住宅ローンのために一時的に親を共有者にすることで、思わぬ相続トラブルを招く可能性があります。
共有名義の不動産は「資産」でもあり「リスク」でもあるという点を理解し、将来のトラブルを未然に防ぐ対策を講じることが大切です。