相続人と相続財産の調査

【更新日】 2025年9月18日(木) 相続 不動産
実家相続の第一歩:相続人と相続財産の調査
実家を相続するときに、まず最初にやるべきことは 相続人の確定 と 相続財産の調査 です。
「とりあえず手続きに入ろう」と焦って進めてしまうと、後で相続人が抜けていたことが判明したり、借金が見つかって想定外のトラブルになることもあります。
そのため、最初の段階でしっかり確認をしておくことがとても重要です。
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相続人の確定
誰が相続人になるのか?
相続人は民法によってあらかじめ決められています。
•    配偶者 …必ず相続人になる
•    子ども(実子・養子) …最も優先される相続人
•    子どもがいない場合は親
•    親もいない場合は兄弟姉妹
つまり「誰が相続人になるのか」は自由に決められるものではなく、法律上のルールに従って確定していきます。
戸籍での確認が必要
相続人を正確に把握するには、被相続人(亡くなった方)の 出生から死亡までの一連の戸籍謄本 を取り寄せて確認します。
これは、途中で認知した子どもや養子縁組が判明することもあるためです。
もし相続人を一人でも漏らした状態で 遺産分割協議(相続人同士で財産の分け方を話し合うこと)をしてしまうと、その協議は無効になります。後から裁判などに発展することもあるので、正確な確認が欠かせません。
なお、現在は「戸籍証明書等の広域交付制度」により、本籍地以外の市区町村役所でも戸籍謄本や除籍謄本の取得が可能になりました。遠方の本籍地まで出向く必要がないのは大きなメリットです。
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相続財産の調査
相続人の確認と並行して行うのが、故人が残した 相続財産の調査 です。
プラスの財産
•    現金・預貯金
•    実家の土地や建物
•    株式や投資信託などの有価証券
•    自動車や貴金属、骨董品など
マイナスの財産
•    借金やローン
•    未払いの税金や医療費
•    保証債務(故人が誰かの連帯保証人だった場合)
「財産」と聞くとプラスのものだけを思い浮かべがちですが、マイナスの財産も含めてすべて引き継がれるため、しっかり調査することが不可欠です。
財産を確認する方法
•    預貯金 … 故人が利用していた金融機関を特定し、残高証明書を発行してもらう
•    不動産 … 市町村(東京23区は都税事務所)で固定資産評価証明書を取得する
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相続財産に応じた選択肢
相続放棄
プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は、相続放棄を選択できます。
これを行うと、その人は初めから相続人でなかったことになり、借金などの負担を一切引き継がずに済みます。
限定承認
相続財産の全容が不明な場合は、限定承認という方法があります。
これは「プラスの財産の範囲内でマイナスの財産も引き継ぐ」という仕組みで、相続人全員が共同で家庭裁判所に申述する必要があります。
ただし限定承認には注意点もあり、
•    相続した不動産や株式は「時価で売却した」とみなされ、譲渡所得税が課税される場合がある
•    相続税計算で利用できる「小規模宅地等の特例」が使えないことがあり、相続税負担が増える可能性がある
といったデメリットもあります。
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手続きの期限に注意
相続放棄・限定承認の申述は、相続が始まったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所で行わなければなりません。
時間が経ってしまうと、放棄も限定承認もできなくなるため、早めに判断する必要があります。
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専門家に相談を
相続人の確定や財産調査は自分でも可能ですが、戸籍の読み方が難しかったり、財産が多岐にわたっていたりすると、見落としが生じやすくなります。
特に限定承認など特殊な手続きを検討する場合は、司法書士・弁護士・税理士といった専門家に相談するのが安心です。